隠れた主役。胸、腰ポケットのデザイン
オーダースーツを構成する要素を様々紹介してきましたが、今回は隠れた主役、スーツのポケットのお話です。
スーツのシルエットを崩してしまうため、原則としてジャケットのポケットには物を入れないのが常識です。
胸ポケットの場合、ポケットチーフを差して優美さを演出するのに装飾することがあります。
スーツの胸ポケットは元来、軍服として着用されていた時代に、心臓のある左胸を守るためポケットをつけて鉄板を入れていたという由来があるそうです。
現在は、流石に鉄板を入れることはありませんが、オーダースーツでは、大きく3つの胸ポケットの形を選ぶことができます。
胸ポケットの種類
ウェルト・ポケット
ポケットの口に、口布(縁飾り)を施した切りポケットの一種です。
オーソドックスなタイプで「箱ポケット」とも呼ばれます。スーツのジャケットや礼服などにも用いられていることが多いです。
また、このタイプでポケットの袖側右端の部分が船の船首のようになっているものを「船ポケット」と呼ぶことがあります。
バッチ・ポケット
布を貼り付けたポケットです。
蓋つきのものなど、バリエーションが豊かです。
主にカジュアルなジャケットに似合います。
バルカポケット
ポケットの底が船底(バルカ)のようなカーブを描く胸ポケットです。
胸板の厚みを美しく見せるために生まれたイタリアの伝統的技法で、ジャケットの立体感を生み出してくれます。
ウェルト・ポケットと同様に、こちらも礼服や背広に用いられるポケットです。
さて、次は腰のポケットについて見ていきましょう。
胸ポケットと同様に、スーツスタイルが崩れてしまうため、このポケットにも物を入れないのがスーツの常識。
さて、すると腰ポケットは何のためのポケットなのでしょうか。
スーツにおける腰ポケットの起源は、軍服として使われていた時代まで遡ります。
この時代、作業時に機能性を重視すべく付けられた仕様の名残であるという説が有力です。
特にフォーマルの場では、装飾的な意味合いが強いです。
オーダースーツでは、様々な腰ポケットに対応しています。
代表的なものを幾つかご紹介しましょう。
腰ポケットの種類
ウェルト・ポケット
切りポケットの一種。
胸ポケットと同様に平行になった腰ポケットは、礼服や背広に広く用いられています。
また、角度が大きく斜めになったこのタイプの腰ポケットはカジュアル用に用いられるポケットで、手が入れやすくなっています。
フラップ・ポケット
デザインと機能性を併せ持った、蓋つきのポケットです。
元来は、雨を防ぐためにつけられたもの。
俗に「雨蓋ポケット」と呼ばれており、腰ポケットにこのポケットを採用した場合は、外では蓋を出しておき、室内に入ったら蓋をしまっておくのがマナーとされています。
チェンジ・ポケット
腰ポケット上部に位置する小さなポケットです。
かつては、ここに小銭(チェンジ)を入れていたことからこの名がつきました。
現在はフラップ(蓋)つきのものが主流ですが、フラップのないチェンジ・ポケットも存在します。
アウト・ポケット
バッチ・ポケットと同じく、布を貼り付けた形のポケットです。
主にカジュアルなスーツジャケットに使われます。
いかがでしたでしょうか。ポケット一つ取っても、これだけの種類があり、それぞれに個性があります。
オーダースーツでは、これらのポケットを全体のバランスと、スーツそのものの美しさを相談しながら決めることが可能です。
ポケットの角度を整えたり、フラップの縁に飾りを入れたり。
貴方の雰囲気に合わせたオーダースーツを、シーンごとに作ってみてはいかがでしょうか。
なお、胸ポケットのバルカポケットに関しましては、現在のところ弊社では承ることが難しい場合があります。
また、有料オプションとなるデザインもございますので、詳しくはスタッフまでご相談くださいませ。